01 農村開発
JICAアフリカ地域CARD促進インフラ・機材整備にかかる情報収集確認調査(2020年~2023年)
アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)とは、サブサハラ・アフリカ地域のコメの生産量を倍増させることを目標に、2008年にJICAと国際NGOのアフリカ緑の革命のための同盟(AGRA)が立ち上げた国際イニシアティブです。2008~2018年には同地域のコメ生産量の倍増を達成し、2019年からは2030年に向け、さらなる生産量倍増を目指しています。
この調査では、CARDに参加するアフリカ32カ国のうち、エチオピア、マダガスカル、ルワンダ、ウガンダ、コートジボワール、ガーナ、リベリア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、ザンビア、カメルーンの12か国を対象に、米の増産のために各国にどのような灌漑施設や機材等のハード面の整備が必要であるかの調査を行いました。
ルワンダにて稲作についての聞き取り調査
ドローン調査
01 農村開発
JICAタジキスタン国SHEPアプローチを通じた農業普及サービス改善プロジェクト(Tajik-SHEP)(2022年~現在)
タジキスタン政府は「Agro-food System and Sustainable Agriculture Development Program for the period up to 2030」により、サプライチェーンの改善やアグリビジネス強化を通じて農業生産性向上に取り組んできましたが、農家の限定的な知識や経験から適切な作物品目や栽培時期等を選択することは容易ではありません。また、タジキスタンでは、政府職員や普及予算の不足により、普及サービスの質・量共に農家のニーズを満たすことができていません。
そのような状況の中、JICAは現地調査を実施し、野菜を生産する農家に対して、「作って売る」から「売るために作る」への意識改革を促すことで、園芸所得の向上を目指すアプローチ(SHEPアプローチ)が、タジキスタンにおいても有効であると判断し、本事業を開始しました。本事業では、SHEP活動実施のための関係者の能力向上や農家へのSHEP研修、実施ガイドラインの作成を行うことにより、政府及び開発パートナーに対してタジクSHEPアプローチの提案を行います。また、農業普及サービスを改善することにより、対象農家の生計向上を図ることを目指しています。
農家向けSHEP研修で実施した市場調査
政府及び開発パートナーのための能力向上研修
01 農村開発
JICAウクライナ国女性農家の包摂性強化を含む小規模園芸農業振興プロジェクト(2024年~現在)
本事業は、ウクライナの小規模園芸農家、とりわけ女性農家の生産能力とビジネススキルの向上を通じて、地域経済の活性化と農業分野の復興に寄与することを目的としています。農業は同国の生活基盤の一つであり、園芸分野には高付加価値化の可能性がある一方、生産性や流通面に課題を抱えています。加えて、労働人口の減少が進む中、女性の農業への参画がますます重要視されています。
本業務では、園芸農業の課題分析や小規模農家の現況調査を基に、女性農家向けの研修プログラムの開発・提案を行い、教育機関との連携による実践的な園芸農業研修の提供を通じて、持続可能な農業発展と女性農家の経済的自立を支援しています。
2024年11月にはキーウで現地調査と関係者との協議を実施し、2025年1月にはウクライナ政府関係者を日本に招いて「日本の園芸農業教育」をテーマとした研修を行いました。今後もプロジェクトを通して、ウクライナの復興と園芸農業振興に貢献していきます。
キーウにて小規模リンゴ農家が運営する農産物販売所
本邦研修でイチゴ温室栽培を視察する研修員
02 水資源・灌漑開発
JICAルワンダ国灌漑水管理能力向上プロジェクト(2019年~2025年)
ルワンダでは、農業がGDPの約33%、労働人口の約7割を占める主要産業であり、政府は農業生産と農家所得の向上に向け、灌漑開発を進めています。その取り組みの一つとして、灌漑施設の運営維持管理の責任を、政府から農民主体の灌漑水利組合に移管する政策を推進しています。しかし、制度や体制の整備が不十分で、支援を行う政府や地方行政の技術的知見や経験等の不足により、農民主体の活動はできていません。
このプロジェクトでは、低湿地が広がり灌漑開発のポテンシャルが高いとされている地域を主な対象として、行政支援組織の組織強化や灌漑水利組合の育成を進め、灌漑施設管理が地元農家によって行えるようにする活動を支援しました。
チアシードの生育状況を確認
農協メンバー対象 農協管理・ジェンダー研修の集合写真
02 水資源・灌漑開発
JICAネパール国タライ東部地域における灌漑施設改修計画(2022年~現在)
タライ平野はネパール国南部のインド国境に沿って東西に広がる低地帯で、亜熱帯気候と肥沃な土壌に恵まれ、コメは国内生産量の74%、コムギは66%、野菜は59%を生産する農業地域です。大規模な灌漑システムが整備されているものの、多くが老朽化しており、灌漑機能は低下し、灌漑面積は限定的となっています。この地域の農業生産量を維持・増進するには、灌漑施設の修復により灌漑面積を拡大することが必要となっていました。
本事業の対象であるチャンドラナハル灌漑地区は、タライ平野に位置する重要な灌漑地区ですが、約100年前に整備された施設であり、深刻な老朽化問題を抱えています。
本事業では、チャンドラナハル灌漑地区における既存灌漑施設の改修により、農業生産性の向上に寄与することを目的に、幹線用水路サイホン、横断排水工、水路横断橋の改修を実施しています。NTCIは本事業のコンサルティング業務を請け負い、施設の詳細設計、事業費積算、入札、施工監理等を行っています。また、ソフトコンポーネントとして、改修後施設の維持管理方法の指導や施設状態評価手法の指導も実施しています。
灌漑施設工事の入札会のために来日した
ネパール国エネルギー・水資源灌漑省の次官他
事業で改修した用水路サイホン(写真中央)
と排水路(写真右側)
02 水資源・灌漑開発
JICAエチオピア国小規模灌漑開発アドバイザー業務(2024年~現在)
エチオピアでは灌漑整備面積が開発可能面積の28%に留まり、多くの農家は天水に依存した農業を行っていますが、気候変動の影響を受けやすい地域のレジリエンス強化の観点からも政府は灌漑の普及を開発計画の戦略的柱としていました。開発パートナー支援の下、小規模灌漑開発にかかるガイドラインが作成されましたが、計画段階での各種調査や施設設計、地元調整を含む事業管理、また施工監理や施設維持管理の面において課題があり、灌漑整備を進めるためには農家や行政官の能力強化が必要とされていました。
本業務では灌漑施設改修や水利組合設立・強化のパイロット活動を通じて典型課題解決の一連のプロセスを示し、技術者や関係組織の能力強化を図るとともに、アドバイザーとして既存ガイドラインの運用上の課題抽出や普及展開にかかる提言をとりまとめ、今後エチオピア政府によって円滑に小規模灌漑開発が進められるよう環境・体制づくりに取り組んでいます。
水利組合と行政職員とのパイロット活動についての会議の様子
改修した灌漑施設を水利組合へ移譲した際の記念写真
03 地域開発・コミュニティ開発
JICAフィリピン国バンサモロ地域におけるイスラム金融普及とハラル産業振興に関する情報収集・確認調査(2025年)
フィリピン南部のBARMM(バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域)は、長年の紛争の影響で国内最貧困地域となっています。また、人口の約9割がムスリムであり、地域経済の活性化に向けて、イスラム金融(イスラム教の教えをベースにした金融取引)とハラル(イスラム教の教えに配慮した食材や食事)産業の振興が期待されています。イスラム金融は、2024年に複数の銀行が参入し始めたものの、資金や人材、金融リテラシーが課題とされています。ハラル産業も潜在力はあるものの、認証制度の信頼性欠如や農業生産から最終消費に至るバリューチェーンの未整備が障壁となっています。
本業務では、BARMMでのイスラム金融普及とハラル産業振興に向けて、JICAが具体的に貢献できる支援を特定する上で必要な情報の収集と分析を行いました。
水産商工業者への聞き取り
ハラル認証関係者会合にて提案を説明
03 地域開発・コミュニティ開発
JICAブルンジ国生計向上を通じた社会的結束のための能力開発アドバイザー業務(2023年~現在)
本業務は、長年の内戦を経て復興途上にあるブルンジにおいて、未だ多くの脆弱層が存在するギテガ県を対象に、包摂的かつ信頼醸成の視点を取り入れたコミュニティ開発と生計向上の支援を目的としています。ブルンジの農村地域では、農業が主要産業である一方、農業インフラの未整備や人材不足、貧困・不平等が社会の不安定要因となっており、地域資源を活用した持続可能な開発が急務となっています。
NTCIは、ブルンジ国環境・農業・畜産省の要請に基づき専門家を派遣し、農村開発政策の整理、信頼醸成を重視した能力強化プログラムの実施、開発パートナーや民間を含めた資金の活用に向けた方策の提案などを通じて、地域の社会的結束と平和の安定・定着、人間の安全保障の実現に貢献しています。
ギテガ県での農村調査
畜産指導を行う現地NGOの活動視察・聞き取り調査
04 平和構築・復興支援
JICAアフリカ地域サヘル諸国における地方行政人材開発を通じた平和と安定強化プロジェクト(2024年〜現在)
G5サヘル諸国(マリ、ブルキナファソ、ニジェール、モーリタニア、チャド)は、度重なる政変や政治的危機による脆弱なガバナンス、農耕民と牧畜民の土地や水資源を巡る対立、さらに人口増加や気候変動がもたらす失業や食料危機による深刻な貧困の蔓延など、複合的な課題を抱えています。近年では、暴力的過激派勢力の拡大による著しい治安の悪化にも直面しており、難民や国内避難民(Internally Displaced Persons:IDP)が大量に発生し、貧困状況にある受け入れ地域の社会経済状況をさらに圧迫しています。
このような複合的な危機に直面するサヘル諸国では、難民・IDPの増加や避難生活の長期化により行政サービスが逼迫し、難民・IDP・ホストコミュニティの公共サービスへのアクセスが制限されています。危機状況が長期化する中、人々の生存に関わる基礎的な社会サービスへのアクセスを確保することは、人道と開発の連携が求められるサヘル諸国において極めて重要な課題です。
本事業では、地方行政を主軸に、村落給水、地域保健、若年層支援に焦点を当て、①地方行政官の能力強化、②公共サービスの提供(パイロット事業の実施)、③広域での経験共有の支援を通じて、行政とコミュニティの能力や信頼の強化を図り、地域の危機対応能力(レジリエンス)の向上を目指しています。
サヘル諸国の中央および地方行政官を対象とした第三国研修
(セネガル)
ブルキナファソ首都ワガドゥグのIDPキャンプサイト
04 平和構築・復興支援
飯舘村長泥地区除去土壌再生利用技術実証事業(2018年~2025年)、広報施設等管理支援業務(2025年〜現在)
NTCIは、2018年より福島県飯舘村長泥地区にて、環境省より受託した除去土壌再生利用技術実証事業に取り組んでいます。本事業では、東北地方太平洋沖地震に伴う原発事故をきっかけに飯舘村内で発生した除去土壌のうち、放射能濃度が低いものを再生資材化し、農地造成に活用しています。造成した農地では、資源作物や食用作物、花き類などの栽培試験を行い、作物の生育性や放射線安全性を検証しています。
2023年には長泥地区の一部で避難指示が解除され、2025年には広報施設「花の里 ながどろ 環境再生情報ひろば」が開設されました。施設では、除去土壌の再生利用に関する取組や安全性について、パネルや映像を通じてわかりやすく紹介しており、花きを栽培しているビニールハウスを含めて、NTCI社員が常駐して来訪者の皆様への案内・説明対応を行っています。地域の復興と持続可能な農業に貢献すべく、技術と知見を活かした支援を続けてまいります。
ビニールハウスでの案内
広報施設での視察対応
04 平和構築・復興支援
JICAブルキナファソ国DXを活用した国内避難民登録支援アドバイザー(2024年~現在)
ブルキナファソでは近年テロの増加に伴い多くの国内避難民(Internally Displaced Persons:IDPs)が発生しており、2023年3月末時点でその数は全人口の9%に相当する206万人に達しています。人材・資金が厳しい制約にある中、IDPsに対する人道支援及び開発支援を効果的に実施するため、政府によるIDPsの登録が重要となりますが、IDPsの急増に対応できず登録の遅延や重複登録、帰還済みIDPの実態把握が不十分など多くの課題がありました。
2023~2024年にかけて実施された先行調査では生体認証データ(指紋)を活用したIDP登録アプリが開発され、DXにより登録負担の軽減が可能であることが確認されました。その後アプリはブルキナファソ政府による導入が正式に表明されましたが、アプリを運用する政府機関の組織体制が脆弱で、アプリの運用・維持管理能力も不足していたため、本業務ではUNHCRとも連携の上、IDPs登録にかかる技術的支援及び体制構築を進めています。
IDPの個人情報を入力し生体認証データと紐づける
生体認証登録テストで指紋センサーに指を当てる子供
05 行政組織化
JICAシエラレオネ国カンビア県地域開発能力向上プロジェクト(2010年~2018年)、レジリエンス強化のための能力向上プロジェクト(モデルプロジェクト実施、ガイドライン改訂・モニタリング体制構築)(2023年~2024年)
シエラレオネでは90年代に続いた内戦やエボラ出血熱の流行により国が疲弊しましたが、国際社会の支援と自助努力により社会・経済状況は徐々に回復し、復興から開発の段階にあります。ところが国の開発を担う行政の人員・能力の不足から「地域ニーズを的確に捉えて事業を計画・実行する」という行政サービスの基本が実践されていません。「カンビア県地域開発能力向上プロジェクト」では、地方自治体職員の地域開発にかかる能力向上のために、コミュニティにおける開発ニーズの把握、開発計画の整理、これらを踏まえて地方自治体として実施すべき事業の優先度の設定を行い、学校建設や保健所の改修等をパイロット事業として実施しました。さらにこれらの過程でみえてきた課題について、開発計画の策定や事業の実施に際してのポイントとして整理し「地域開発事業実施ガイドライン」としてまとめました。その後、このガイドラインの広域展開・普及を目的とした「レジリエンス強化のための能力向上プロジェクト」が実施され、その中でNTCIはガイドラインに沿ったパイロット事業の実践、ガイドラインの改訂、モニタリング体制の構築を支援しました。
県議会職員によるコミュニティへのプロジェクトの説明を支援
中央省大臣、JICA職員、専門家による今後の普及に関する協議
06 人材育成(研修)
JICA課題別研修「サブサハラアフリカ地域・稲作開発振興(A)および(B)」コース研修業務委託(2021年~2024年)
アフリカ地域では90年代後半以降、コメ生産の低成長に比して大幅な消費の増大によりコメの輸入量が急激に増加し、世界的な穀物価格上昇も相まって食糧不安を引き起こしており、緊急対策ならびに中長期的生産拡大が必要となっています。JICAはアフリカ緑の革命のための同盟(AGRA)と協力し、2008年に「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD:Coalition for African Rice Development)を立ち上げ、サブサハラアフリカ地域における稲作振興を積極的に支援してきました。
本業務では2016年度から始まる3年間で、CARDイニシアティブ加盟国(23カ国)から延べ74名を対象に、各国の稲作振興にかかる経験及び今後の方向性を共有すると共に、継続的な情報交換に向けたネットワーク構築を促進する目的で本邦研修を実施しました。日本の稲作の歴史的変遷を稲作生産者の苦労や工夫を交えながら紹介したほか、毎年異なる稲作技術をテーマとして設定し、各テーマに合った講師・視察先の選定及び事前調整、視察旅行への同行等、より効果的な研修プログラムとなるよう配慮しながら企画・運営を主導しました。また類似した問題を抱えるアフリカ諸国の研修参加者が、問題点やそれを如何に克服しているか等の事例を参加者同士で共有し、ディスカッションを促進するプログラムも設けました。
稲作農家視察の様子
稲作灌漑インフラ研修にて頭首工視察